エイズ・ポスター・プロジェクトのページ(8)

AIDS FAQ

F requently A sked Q uestions about AIDS
★ここでは、AIDSについてよく聞かれる質問にお答えしましょう★

ここに紹介するのは、私たちAPPがある高校にスライド上映と講演に招かれた際、その学校で事前に行なわれた学習会で生徒たちから出されていた質問に答えたものです。ただし、APPの制作した「Safer Sexy」というスライドを上映することを前提にして答えていますから、スライドを見ればわかることには必要以上に答えていません。悪しからずご了承下さい。

Q1. どうしたら感染するのかKISSでも感染するのか。
A1. 体液のうち、血液(経血を含む)・精液(カウパー氏腺液を含む)・膣分泌液・母乳が、粘膜や開いた傷口に接触すると、感染経路になる。粘膜は、肛門から直腸にかけて・膣前庭から膣内にかけて・尿道口・口腔内・鼻腔内・まぶたの裏側(下図参照)。したがって歯科治療などで出血していればキスでも感染する(1例だけ報告がある)。

female_genital    male_genital
face

Q2. 感染しないようにする方法は。また、感染するとどれぐらいで死に至るのか。
A2. 体液が粘膜・傷口に接触しないようラテックス(コンドームの材質=合成ゴム)のバリヤーをする。注射針を他人と共用しない。

Q3. カやダニを介して感染しないのはなぜか。
A3. カやダニは人の血液を吸うが、それを別の人に注入することはできない。もしできたとしても、感染するほどの量ではない。

Q4. 血液が皮膚に付いた場合洗えば安全か。
A4. 傷口がなければ血液が付着してもだいじょうぶ。健康な皮膚はウイルスを通さない。

Q5. エイズに感染しやすい血液型とそうでない血液型はあるのか。
A5. ない。感染経路さえあればウイルスは人を選ばない。ただ、病気の進行は個人差がある。

Q6. 小さい病院でも検査を受けられるか。
A6. 病院でも受けられる(有料)が、保健所では匿名・無料で受けられる。

Q7a. 薬で発病を遅らせるとすればどのくらいか。
Q7b. 感染したらどれくらい生きていられるのか。
Q7c. 治療のめどは立っているのか。あとどれくらいで治せるのか。現在の治療法はどんなものか。
A7. 薬を使うことで数年〜10年以上遅らせられる(個人差がある)。最近はいくつかの薬を併用することでウイルス量が減って、最終的にウイルスが検知できなくなった例がいくつも報告されている。したがって100%死ぬとは言えない。ただし、ウイルスは体のどこかに潜んでいて薬をやめるとまたウイルスが増殖するかも知れない(まだ不明な点が多い)。

Q8. 感染した場合100%死ぬのか。感染したらどんな症状が出るのか。
A8. 最初の2〜3週間でかぜのような症状の出る人がいるが、その後は無症状のことが多い。

Q9. エイズの進行を遅らせる方法はあるのか。またあればその薬の副作用はどうか。
A9. 人によってさまざまだが、貧血・下痢・便秘・食欲不振・体がだるいなどの副作用が報告されている。

Q10. 潜伏期(何年)とそれを過ぎてからはどっちが他人にうつす可能性が高いのか。
A10. 感染後2週間で他人に感染させられるほどウイルスが増殖する。ウイルス量がいちばん多いのは、感染初期の2〜3ヶ月と発症後で、ウイルス量が多いほど感染させやすいが、潜伏期間中もじゅうぶん感染させるだけのウイルス量がある。

Q11. エイズに感染しているかどうかどうして判断するのか。
A11. 現在、保健所で無料・匿名でおこなわれている検査は、HIV抗体検査と呼ばれ、血液中の抗体の有無を検査する。ただし、感染してから6〜8週間は、まだ抗体ができておらず、この空白期間に検査してもパスしてしまう(つまり感染していないと思い込んでしまう)ため、ウイルスそのものを検知する検査方法が開発されつつある。

Q12. 輸血で感染するのなら手術はどうして行うのか。
A12. 通常、輸血用血液は検査済みでウイルスを含んでいないはずだが、空白期間に献血された血液の場合、感染していても検査を素通りしている可能性があり、輸血用血液は完全に安全とは言えない。

Q13. 血液を全部入れ替えたら完治できるのではないか。
A13. 全血液を抜いてしまったら人は死ぬ。少しずつ交換してもウイルスはなくならない。それに血液以外の体液中にもウイルスはいる。

Q14. 免疫低下とは具体的に何か。
A14. 体の抵抗力が落ちること。免疫とは体を異物から守るシステムのことで、免疫が低下すると、さまざまな異物(細菌やウイルスなど)が体の中に入っても攻撃されないまま放置されてしまう。

Q15. 感染すると生活にどんな影響が出てくるのか。
A15. 毎日規則正しい薬の服用(副作用もある)という点を除き、発症前は何も変わらない(セックスは相手が誰でもセイファーセックスを実行すること)。発症後は、通常は何でもない細菌やウイルスに対して抵抗力がなくなる(日和見感染症)。社会的には、自宅から遠い拠点病院に通うのが大変とか、身近な人に相談できず孤立する可能性もある。また、治療に対して保険は使えるが、保険を使うと治療内容について勤務先に報告が行くため、保険を使わず全額自己負担で治療している人も多く、他の薬に比べて利用者の少ないエイズ治療薬は高額なため、経済的に苦しい状況になることもある。

Q16. 感染した場合どういう措置をとるのか。
A16. エイズ予防法では、医師は感染者を発見したら知事に報告し、感染者に対して生活上の注意を説明するよう義務づけられている。

Q17. エイズに感染すると子どもを作ることはできないのか。
A17. 男性が感染している場合、HIVを分離した精子で人工受精する方法もある。女性が感染している場合、胎児への感染確率は3分の1で、投薬で6分の1に下げられる。出産時の感染は帝王切開によって回避できる。母乳による感染は粉ミルクを使うことで防げる。子どもを作るかどうかは本人たちが決めること。

Q18. 自分がエイズと分かった時他人に告げるべきか。
A18. 医師は感染告知の時「過去に性交渉のあった相手にも検査に行くよう薦めなさい」と言う。その他の人に告げる必要はない。ただ、周囲のサポートを受けるためには、信頼できる人や、サポートグループに相談した方がいいだろう。

Q19. 日本全国にどれくらいの患者がいるのか。またその中でエイズと公表している人は何人くらいなのか。どんな生活をしているのか。
A19. 厚生省によると、日本の感染者は2860人(1997年2月、血液製剤によるものを除く)。マスコミを通じて公表している人は(故人ふくめ)10人もいない。

Q20. 世界のどの地域に感染者が一番多いのか。
A20. 現在、先進国では予防法の普及と治療法の進歩で爆発的な感染はおさまりつつある。アジア・アフリカの発展途上国では、識字率の低さから予防法がなかなか普及しない・コンドームが手近に豊富にない・宗教上の理由でコンドームを使いたがらない・貧しいため高いエイズ治療薬を使えないなどの理由で、爆発的に拡がっている。

Q21. エイズが発見されたのはいつか。
A21. アメリカで、原因不明の免疫不全を起こしている患者が最初に報告されたのが1981年、ウイルスが初めて分離されたのが1984年。

Q22. エイズウイルスに種類はあるのか。潜伏期間に差があるのは何故。
A22. I型とII型があり、後者は西アフリカに多く、他地域にはあまり拡がっていない。潜伏期間になぜ個人差があるのかは不明。むしろ治療開始時期によって発症までの期間が大きく変わることの方が重要(当然、早期発見・早期治療の方がよい)。

Q23. T細胞とは何か。
A23. 白血球の中のリンパ球の一種。体内に異物が入ると、ヘルパーT細胞(CD4)がB細胞に指令を出し、B細胞は抗体を作る。キラーT細胞は抗体の付いた異物を攻撃する。感染が抑えられると、サプレッサーT細胞(CD8)の働きでB細胞は抗体の生産を止める。エイズではヘルパーT細胞が破壊されるため、異物への攻撃指令ができなくなる。

Q24. どうしてエイズが増えたのか。なぜ20〜29歳の患者層が多いのか。
A24. 15世紀以降、交通の発達によって人の移動が活発になるにつれ、さまざまな感染症が世界規模で拡がるようになってきた。エイズ感染拡大の理由としては、最初に患者が報告されてから病原体を特定できるまでに3年かかったこと、レトロウイルスはどんどん違うタイプのものが発生するのでワクチンの開発が追いつかないこと、また日本では加熱血液製剤の認可が遅れたことなどがある。若い人に多いのは、性感染が多いから。

Q25. エイズは人間だけがかかる病気なのか。
A25. エイズ(AIDS)は後天性免疫不全症候群のことで、人間以外でも起こるが、人間にエイズを引き起こすHIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、人間だけに免疫不全を起こさせる。

Q26. エイズウイルスは感染してうつるが、人類に初めてエイズウイルスが生まれたのはなぜか。なぜエイズは増え続けているのか。
A26. どうして生まれたのかは不明。ただ、HIVは人間以外にチンパンジーの体内でも生きられ、しかもチンパンジーの体には何も異常を起こさないことがわかっており、もともとチンパンジーに寄生していたのではないかと考えられる。

さらに詳しいことを知りたい人には…マイケル・T・フォード『エイズQ&A100』アーニ出版、岩室紳也『エイズ−−いま、何を、どう伝えるか』大修館書店、広河隆一『薬害エイズ』『裁かれる薬害エイズ』岩波ブックレット、ランディ・シルツ『そしてエイズは蔓延した島普x草思社、畑中正一『ウイルスとどうつきあうか』NHKライブラリー、などがお薦め。エイズに関する本は多数出ていますが、純潔・禁欲を訴えるなど、性に対する考え方が非現実的だったり、同性愛に対する差別意識が明白な本も多いので要注意。また、エイズに関してはまだまだ研究途上で、以前の知識がどんどん塗り替えられていく分野ですから、あまり古い本はお薦めできません。

1997.9.25./AIDS Poster Project



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